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オンデマンド出版とは?仕組み・費用の内訳・向き不向きを解説

名刺代わりの本を出したいけれど、在庫は抱えたくない。

1冊から作れるオンデマンド出版で足りるのか、迷っていませんか?注文を受けてから印刷するので在庫は持たずに済みますが、費用の出方や書店への並び方には注意が要ります。

本記事では、Amazonの出版サービスKDPを例に、仕組みと費用の内訳、向き不向きを解説します。

目次

オンデマンド出版とは?注文に応じて必要な分だけ作る出版方式

オンデマンド出版の2つの意味として、1冊単位で印刷・製本するブックオブワンと、小ロットの重版であるDSRを並べて示した図

オンデマンド出版は、注文を受けてから必要な分だけ印刷・製本して届ける出版方式です。

注文を受けてから、必要な分だけ印刷・製本する仕組み

業界では、この言葉を大きく2つの意味で使います。

1つは、1冊単位で印刷・製本する「ブックオブワン」で、主にECサイトで実現されている形です。

もう1つは、オフセット印刷では対応できない小ロットの重版で、DSR(デジタル・ショートラン)とも呼ばれます。

出典:日本印刷技術協会(JAGAT)「オンデマンド印刷とオンデマンド出版の動向」(見出し「定着したオンデマンド出版サービス」)

似た言葉の違い:POD・オンデマンド印刷・ブックオブワン・DSR

POD(プリント・オン・デマンド)やオンデマンド印刷は、印刷の方式そのものではなく、印刷のサービスやビジネスの形を指す言葉です。

印刷方式としては「デジタル印刷」と呼ぶのが正確で、ブックオブワンはこのデジタル印刷の品質と生産性が上がり、ECサイトでの書籍販売が一般的になったことで実現しました。

短納期・小ロットの印刷サービス全般をオンデマンド印刷と呼ぶ人もいて、言葉の幅は会社ごとに違います。

オフセット印刷との違いは「版を作るかどうか」

オンデマンド出版に使うデジタル印刷とオフセット印刷を、版・小ロット・在庫と返本で比べた表

従来の出版との違いは、印刷に版を作るかどうかと、在庫や返本のリスクを誰が負うかに表れます。

印刷方式の違い:版を作るか、作らないか

PODの印刷に使うデジタル印刷は、物理的な版を作らない無版印刷方式です。

物理的な版の代わりに、デジタルのイメージが版の役割を果たします。

デジタル印刷は、オフセット印刷では対応できない小ロットの重版や、オフセット印刷では割高になる小ロットのフルカラー化に使われています。

出典:日本印刷技術協会(JAGAT)「オンデマンド印刷とオンデマンド出版の動向」(冒頭の用語整理・出版社による小ロット対応)

KDPでは、在庫・保管・返本のリスクを負わない

Amazon KDP(Kindle Direct Publishing)で出す場合、出版する側には初期費用も、保管費用も、返本のリスクもかかりません。

ただし印刷費は無料ではなく、売れた分の売上から差し引かれます。

出典:日本印刷技術協会(JAGAT)「オンデマンド印刷とオンデマンド出版の動向」(見出し「定着したオンデマンド出版サービス」:Amazonの仕組み)

従来の出版では、売れ残りのリスクを出版社が持つ

書店に流通させる従来の出版では、委託販売制度が使われてきました。

新刊は期限内なら返品でき、書店は仕入れの不安を減らせる一方、売れ残りのリスクは出版社が持ちます。

返品された本の在庫保管や廃棄にはコストがかかり、2024年の返品率は書籍で33.2%でした。

出典:経済産業省「出版産業における返品削減研究会 とりまとめ」(2026年4月・3ページ「委託販売制度」、4ページ「返品に関する課題について」)

オンデマンド出版のメリット2つ

オンデマンド出版のメリット、1冊から出せて少部数・配布用の本に向くことと、定着している分野があることを示すカード

初期費用と在庫を抱えずに済む点は、前の章で触れました。

そのほかのメリットは、少部数から出せることと、品切れ本などの分野に定着していることの2つです。

1冊単位で出せるので、少部数・配布用に向く

KDPの日本語ペーパーバックは、1冊から注文を受けて印刷されるため、まとまった部数を先に刷る必要がありません。

セミナーで手渡す、取引先に配るといった少部数の配布にも向いた方式です。

品切れ本や専門書、個人出版の分野で定着している

たくさんは売れにくい専門書や技術書、いったん品切れになった本、個人で出す本では、1冊ずつ刷るオンデマンド出版がすでに定着しています。

長く売り続けたい本なら、サービスや販売先が終わったときに別の販売先へ移せるかも確かめておきましょう。

Amazon(KDP)で出すときのデメリット3つ

Amazon KDPで出すときのデメリット、ペーパーバック中心の製本・外部流通の対象外・仕様の改定を示すカード

製本の選択肢、書店への流通、仕様の改定が、KDPで出すときの3つの制約です。

KDPの仕様は、2026年10月時点の内容です。

KDPで選べる製本はペーパーバックが中心

KDP公式ヘルプでは、日本向けのハードカバーは現在サポートされていません。

紙の本は、表紙がやわらかいペーパーバックが中心です。

硬い表紙の上製本で出したい場合は、KDP以外の出し方が候補です。

日本語のペーパーバックは、KDPの外部流通の対象外

KDPには、書店や図書館などへ本を届ける「Expanded Distribution(外部流通)」という仕組みがあります。

日本語のペーパーバックは、2026年10月時点で外部流通の対象外です。

出典:Amazon KDP「Paperback Royalty」(冒頭:日本語のペーパーバックは外部流通に登録できない旨の記載)

仕様や料金は改定されうる

印刷コストやロイヤリティ、日本語のペーパーバックが外部流通の対象外という扱いは、KDPの運用の中で変わることがあります。

出版する前に、KDPの公式ヘルプと計算ツール「Printing Cost & Royalty Calculator」で、最新の条件を確かめましょう。

オンデマンド出版の費用は、印刷費・ISBN・原稿まわりの外注費に分けて考える

オンデマンド出版の費用を印刷費・ISBN・原稿や表紙などの外注費に分けて示した内訳図

費用は、印刷費、ISBN、原稿・表紙・校正の外注費に分けると見通しがつきます。

KDPの紙の本の定価は、税抜の金額です。

KDPの印刷コストはロイヤリティから引かれる

前述のとおり事前の費用はかかりませんが、印刷コストは本が売れるたびにロイヤリティから差し引かれます。

Amazon.co.jpで買われた本の印刷コストは、判型・ページ数・インクで次のように決まります(2026年10月時点)。

インクの種類とページ数通常判型大判
黒インク(白紙・クリーム紙) 24〜110ページ422円/冊530円/冊
黒インク(白紙・クリーム紙) 110〜828ページ206円+2円×ページ数206円+3円×ページ数
プレミアムカラー 24〜40ページ475円/冊475円/冊
プレミアムカラー 42〜828ページ206円+4円×ページ数206円+5円×ページ数

通常判型は幅155.5mm以下かつ高さ228.6mm以下で、それを超えると大判です。

プレミアムカラーのページ単価は通常判型で4円と、黒インクの2円より高くなります。

出典:Amazon KDP「Paperback Printing Cost」(Amazon.co.jp の表:黒インク・カラーインク)

1冊売れたときの手取りの出し方

手取りのロイヤリティは、(ロイヤリティ率×定価)-印刷コストで求めます。

ロイヤリティ率は、Amazon.co.jpでは定価999円以下が50%、1,000円以上が60%です(2026年10月時点)。

編集者の計算では、通常判型・黒インク・300ページの本の印刷コストは、206円+2円×300ページで806円です。

定価1,500円なら、0.6×1,500円-806円で、手取りは94円になります。

出典:Amazon KDP「Paperback Royalty」(How we calculate paperback royalties:ロイヤリティ率の表と計算式)

ISBNを自分で取る場合の費用

ISBNを自分で取るには、日本図書コード管理センターに出版者記号を申請し、1タイトルだけなら8桁のシングルコード(1点)で足ります。

出版者記号の桁数発行できる点数新規申請料(税抜)
6桁100点40,320円
7桁10点22,000円
8桁(シングルコード)1点11,000円

書籍JANコード(二段バーコード)の登録申請料は別で、売上1億円未満の場合は3年分で10,000円(税抜)です。

KDPの無料ISBNとの違いは、次の章で扱います。

自費出版全体の費用は、「自費出版とは?費用の見方・流れ・選び方を解説」で比較しています。

出典:一般社団法人 日本出版インフラセンター 日本図書コード管理センター「料金表」(ISBN出版者記号の新規申請料・書籍JANコードの登録申請料)

原稿・表紙・校正にかかる費用は、印刷費とは別に見る

原稿の執筆・編集、表紙のデザイン、校正といった作業は、印刷コストに含まれません。

外注するなら、見積もりにどの作業まで含まれるかを確かめてください。

印刷と販売をKDPに任せても、原稿づくりは著者の仕事として残ります。

「話すだけで書籍が完成する」出版支援の詳細はこちらをご覧ください。

KISACHI.の出版支援サービス

Amazon(KDP)で紙の本を出すときに決める3つのこと

KDPで紙の本を出す前に決める判型とページ数・ISBN・定価のチェックリスト

KDPで紙の本を出すときは、判型とページ数、ISBN、定価の3つを入稿の前に決めます。

電子書籍で出す場合の手順は、「電子出版とは?電子書籍を自分で出版・販売する方法」で解説しています。

判型とページ数を決める

KDP公式ヘルプでは、日本向けの判型は12種類で、最小ページ数は24ページです。

判型は寸法(インチとcm)で示され、A5や四六判といった日本の判型名は載っていません。

手元の本の寸法とKDPの表を見比べて、近い判型を選んでください。

ページ数は原稿ファイルから計算され、必要なら偶数に切り上げられます。

最大ページ数は、インクや用紙、判型の組み合わせ次第です。

ISBNは無料ISBNか自前かを選ぶ

KDP公式ヘルプでは、紙の本にはISBNを付ける決まりになっています。

電子書籍など一部の形式だけは、ISBNが任意です。

KDPの無料ISBNはKDPでしか使えず、ほかの出版サービスでは使えません。

自分で取ったISBNは、KDP以外の出版サービスでも使えます。

KDPだけで出すのか、ほかの販売先も使うのか、先に決めておいてください。

定価を決める:最低定価の式と消費税の扱い

紙の本の定価は、消費税を除いた税抜の金額で設定するルールです。

Amazon.co.jpでは、消費税10%をAmazonが自動で加算します。

最低定価は、印刷コストをロイヤリティ率(50%または60%)で割って求め、これより低い定価は設定できません。

300ページの黒インク本なら、806円÷0.6で約1,343円です(編集者の計算)。

出典:Amazon KDP「Setting Prices for Amazon Japan」(冒頭:日本の消費税の扱い、Print book の表:最低定価の式)

KDP以外のサービスを比べるときの3つの観点

KDP以外のオンデマンド出版を比べる、お金の出方・ISBN・販売先の3つの観点と確認する質問の表

KDP以外にも、オンデマンド出版を扱うサービスがあります。

サービス名で比べる前に、次の3つの観点を確かめてください。

観点1:お金の出方(登録費と印刷費の取られ方)

まず、出版時の登録料の有無と、印刷費が売上から引かれるかどうかを確かめます。

KDPは事前の費用がかからず、印刷費が売上から引かれる型です。

比べる相手にも、同じ確認をします。

観点2:ISBNを誰が付けるか確かめる

ISBNを事業者が付けるのか、自分で取るのかを確かめます。

KDPの無料ISBNがKDPでしか使えない点は、前の章で触れました。

観点3:販売先と書店への届き方

販売先がネット書店中心なのか、書店では取り寄せ注文が中心になるのかを確かめます。

書店の棚に並ぶ保証があるサービスかどうかも、あわせて質問します。

KDPの日本語ペーパーバックは、前述のとおり外部流通の対象外です。

経営者・士業の本づくりにオンデマンド出版は向いているか

書店の棚に並べたいか、上製本にしたいか、配布・セミナー・営業で使うかで、KDPのペーパーバックで足りるか別の形を検討するかを判断するフロー図

向いているかどうかは、その本を何のために使うかで決まります。

PODで足りるのは、書店に並べなくても目的が果たせる本

KDPの日本語ペーパーバックは書店流通が前提にならないため、書店に並べなくても目的が果たせる本に向きます。

大切なのは、その本を誰に、どんな場面で渡したいかを先に決めることです。

セミナーの参加者に手渡す本や、商談の場で渡す名刺代わりの本、営業の資料に添える本なら、書店の棚がなくても役目を果たします。

ただし、出版しただけで売上や集客が約束されるわけではありません。

書店に並べることが目的なら、別の形を検討する

KDPの日本語ペーパーバックは外部流通の対象外なので、書店の棚に並べることが目的なら別の形が候補です。

硬い表紙の上製本で出したい場合も、KDPは日本向けのハードカバーに対応していません。

この2つのどちらかが必須なら、検討すべきはKDPのオンデマンド出版以外の出し方です。

商業出版・企業出版・電子書籍との使い分け

出版の形そのものを比べるなら、「本の出版方法を完全比較|商業出版・自費出版・電子出版・出版プロデュースの違い」を読んでみてください。

会社として本を出す進め方は、「企業出版とは?メリット・費用・出版までの流れを解説」で解説しています。

紙と電子で迷うなら、「電子書籍と紙どっち?経営者の出版選択ガイド|ブランディング比較」が参考になります。

オンデマンド出版についてよくある質問

Q1. 表紙を光沢にするかマットにするかで、印刷コストは変わりますか?

変わらない仕様です。

KDPでは、裁ち落としの設定と表紙の仕上げ(光沢・マット)は、印刷コストに影響しません。

印刷コストを左右する要素は、次の4つです(注文されたAmazonのサイトによっても異なる)。

  • 判型
  • ページ数
  • インクの種類
  • 用紙

出典:Amazon KDP「Paperback Printing Cost」(冒頭:裁ち落としと表紙の仕上げは印刷コストに影響しない旨の記載)

Q2. KDPの無料ISBNを使うと、出版者名はどう表示されますか?

「Independently published」と表示されます。

登録先は、米国のISBN機関(Bowker)です。

自分で取ったISBNなら、出版者名(インプリント)を自分で付けられます。

その場合、KDPに入力する書名・著者名・出版者名がISBN機関の登録内容と一致していないと、出版できません。

Q3. カラーの本を出すとき、KDPで選べるインクの種類は?

Amazon.co.jpで選べるカラーのインクは、プレミアムカラーの1種類です。

スタンダードカラーは、2026年10月時点でAmazon.co.jpでは利用できない扱いです。

プレミアムカラーは24ページから、最大828ページまで選べます(判型により上限は変わります)。

Q4. 個人でも、ISBNの出版者記号を自分で取れますか?

個人でも登録できます。

窓口は、日本出版インフラセンターが運営する日本図書コード管理センターです。

出典:一般社団法人 日本出版インフラセンター 日本図書コード管理センター「料金表」(申請料金の算出:個人の場合は直近1年間の売上高で算出する旨の記載)

Q5. KDPのペーパーバックに設定できる最高定価はいくらですか?

Amazon.co.jpでは、税抜30,000円です(2026年10月時点)。

出典:Amazon KDP「Setting Prices for Amazon Japan」(Print book の表:Maximum)

まとめ:オンデマンド出版は、書店に並べなくても目的が果たせる本づくりに向く

オンデマンド出版は、在庫と初期費用を抱えずに1冊から出せる一方、KDPの日本語ペーパーバックは外部流通の対象外で、印刷コストは売上から引かれます。

費用は印刷費・ISBN・外注費に分けて見て、KDP以外を選ぶなら登録費、ISBN、販売先を比べてください。

まずは本を渡したい相手と場面を書き出し、書店流通が必要かを決めてから、公式の計算ツールで手取りを試算しましょう。

「話すだけで書籍が完成する」出版支援の詳細はこちらをご覧ください。

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友部 貴幸(ともべ たかゆき)|KISACHI.株式会社 代表取締役

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